- 2025年11月30日
認知症と骨粗しょう症には意外な関係があります―転倒予防と骨折予防のために、どちらも早めの対策が大切です ―
「認知症と骨粗しょう症は別の病気」と思われる方は多いかもしれません。
しかし近年の研究で、認知症の方は骨粗しょう症になりやすく、骨粗しょう症の方は転倒・骨折から認知症が進むリスクが高いという、密接な関係があることが分かってきました。
当院でも、両者が重なって困っている患者さんを多くみかけます。
■ なぜ認知症になると骨粗しょう症が進行しやすいのか?
認知症の患者さんでは、以下の理由で骨量が低下しやすくなります。
① 食事量の低下・偏食
認知症が進行すると食事量が減ったり、カルシウム・ビタミンD・たんぱく質が不足しがちになります。
② 屋外活動が減り、日光を浴びる時間が少なくなる
ビタミンDは日光で活性化されます。活動量が落ちると骨を守る力が弱くなります。
③ 体を動かす機会の減少
骨は「負荷」がかかることで強くなるため、活動量が少ないと骨が弱くなりやすくなります。
④ 一部の薬の影響
抗精神病薬、睡眠薬、抗てんかん薬などが骨密度に影響することがあります。
■ 骨粗しょう症が認知症に悪影響を与える理由
逆に、骨粗しょう症があると認知症が進みやすくなることも知られています。
① 転倒 → 骨折 → 入院 → 認知症の悪化
大腿骨近位部(足の付け根)の骨折は、急激な環境の変化・長期入院につながり、認知症が一気に進行することがあります。
② 痛みや歩行困難が活動量を減らす
動けなくなる → 外出しなくなる → 刺激が減る → 認知機能の低下
という流れが起こりやすくなります。
③ 痛みによる睡眠障害
睡眠の質が落ちると、認知症は進行しやすくなります。
■ 「認知症 × 骨粗しょう症」の組み合わせは転倒リスクが非常に高い
認知症により
・注意力の低下
・歩行のふらつき
・夜間の徘徊
などが起こると、転倒の可能性が高まり、そこに骨粗しょう症があると骨折の危険性が飛躍的に上がります。
そのため、実はこの2つは切り離して考えることができません。
■ 当院がおすすめする対策
認知症の有無に関わらず、以下の対策はご家族の安心にもつながります。
1. 骨密度検査を定期的に受ける
認知症がある方ほど早期発見が大切です。
2. ビタミンD・カルシウムの適切な摂取
不足している場合は、食事指導やサプリ、薬を併用します。
3. 転倒しにくい環境づくり
段差、暗い廊下、滑りやすい床の改善は非常に重要です。
4. 適度な運動
散歩、いすからの立ち座り運動など、負担のない範囲で筋力を維持していきます。
5. 骨粗しょう症の治療薬の検討
骨折リスクの高い方は、服薬・注射による治療を早めに行うことで、転倒時の骨折を大幅に減らすことができます。
■ まとめ
認知症と骨粗しょう症は、一見関係がなさそうに見えて、実は深くつながっています。
・認知症の方は骨が弱くなりやすい
・骨粗しょう症があると転倒・骨折から認知症が進むことがある
・だからこそ「早期発見・予防」が非常に重要
ご本人だけでなく、ご家族の安心にもつながる取り組みです。
「最近つまずきやすい」「食が細くなった」「以前より歩かなくなった」
そんなサインが気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。