- 2025年9月15日
サーカディアンリズムと免疫のお話
私たちの体には「サーカディアンリズム(概日リズム、体内時計)」と呼ばれるおよそ24時間周期のリズムがあります。これは脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部位が中心となって全身を調節しており、睡眠・覚醒のリズムだけでなく、ホルモン分泌や代謝、さらには免疫機能まで影響を与えています。
免疫系の中でも「T細胞」は非常に重要な役割を担っています。T細胞はリンパ球の一種で、外から侵入したウイルスや細菌を排除したり、がん細胞を監視したりする働きがあります。近年の研究により、このT細胞の働きもサーカディアンリズムに強く依存していることが明らかになってきました。
例えば、T細胞が血管内を移動し、リンパ節に入って抗原提示細胞と出会う過程は、体内時計によって調整されています。具体的には、細胞表面にある接着分子(インテグリンなど)の発現が時間帯によって変動し、昼間の方が効率的にリンパ節に集まりやすいことがわかっています。そのため、昼間はT細胞が活発に動き、外敵に対する免疫応答が起こりやすい状態になるのです。
一方で、夜間には体が休息モードに入り、T細胞の動きも比較的落ち着きます。この時間にしっかり睡眠をとることで、免疫システムは回復・調整され、翌日の活動に備えることができます。
逆に、夜更かしや不規則な生活でサーカディアンリズムが乱れると、T細胞の動きや免疫応答の効率が低下することが報告されています。その結果、感染症にかかりやすくなったり、ワクチン接種の効果が下がったり、がん細胞に対する監視機能が弱まる可能性も指摘されています。
日々の生活リズムを整えることは、単に「よく眠れる」だけでなく、私たちの免疫システムを最大限に働かせるために非常に重要です。