• 2025年12月14日

腸内細菌が体内時計を整える?― 酪酸と「概日リズム」の深い関係 ―

私たちの体には、「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる体内時計があります。
睡眠と覚醒、体温、ホルモン分泌、食欲などは、この体内時計によって1日約24時間のリズムで調整されています。
実は最近、この体内時計の形成や安定に、腸内細菌が作り出す物質が関わっていることが分かってきました。その代表が「酪酸(らくさん)」です。

酪酸とは何か?
酪酸は、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖、レジスタントスターチなどの難消化性炭水化物を発酵させることで作り出す代謝産物です。
特に、野菜・海藻・豆類・全粒穀物などに多く含まれる水溶性食物繊維が材料になります。
酪酸はこれまで、
・大腸のエネルギー源になる
・腸の粘膜を強くする
・炎症を抑える
といった働きが知られていましたが、近年は全身への影響にも注目されています。

酪酸が「体内時計」に影響する仕組み
酪酸は腸で作られた後、血流にのって全身に作用します。
研究では、酪酸が
・体内時計をつかさどる遺伝子の働きを調整する
・肝臓や腸などの「概日リズム」を整える
・昼夜のリズムに合わせた代謝を助ける
ことが示されています。
つまり、腸内環境が乱れると体内時計も乱れやすくなる可能性があるのです。

生活リズムの乱れと腸内環境
夜更かしや不規則な食事、食物繊維の不足が続くと、酪酸を作る腸内細菌が減り、体内時計が乱れやすくなります。
その結果、
・寝つきが悪い
・朝すっきり起きられない
・体重が増えやすい
・生活習慣病のリスクが上がる
といった影響につながることもあります。

体内時計を整えるためにできること
酪酸を増やすためには、特別なことよりも日々の食事と生活リズムが大切です。
・野菜・海藻・豆類を意識してとる
・発酵食品を適度に取り入れる
・毎日なるべく同じ時間に食事をする
・夜更かしを避ける
こうした習慣が、腸内細菌を通して体内時計の安定につながります。

酪酸は、腸内細菌が作る「腸だけでなく全身に働く物質」です。
腸内環境を整えることは、睡眠や代謝を支える体内時計を整えることにもつながります。
「腸を整えることは、生活リズムを整えること」
日々の食事と生活習慣を、少し意識してみませんか。

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