- 2026年3月1日
2026年4月からの肺炎球菌ワクチン改訂― 血清型動向を踏まえた最適な接種選択 ―
2026年4月より、高齢者の肺炎球菌ワクチン公費制度が変更され、20価結合型ワクチン(PCV20)が定期接種の中心となります。
■ なぜワクチンの種類が変わるのか
肺炎球菌には現在100種類以上の血清型が存在し、日本ではそのうち特定の血清型が侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:菌血症・敗血症・髄膜炎など)を引き起こしています。
これまで高齢者定期接種で使用されてきたPPSV23(23価ポリサッカライドワクチン)は幅広い血清型をカバーする一方、免疫記憶を形成しにくいという特徴があります。
一方、結合型ワクチン(PCV)はT細胞依存性免疫を誘導し、免疫記憶を形成できるため、より持続的かつ機能的な免疫応答が期待できる点が大きな利点です。
■ 65歳を迎える方:PCV20(20価結合型)
PCV20は、従来のPCV13に含まれていた13血清型に加え、新たに7血清型を追加し、合計20血清型をカバーします。
日本国内で問題となっているIPD原因血清型の多くを網羅しており、1回接種で広範な予防効果が期待できます。
特にワクチン未接種の方においては、
✔ 1回接種で完結
✔ 免疫記憶の形成
✔ 侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果向上
という点で、合理的な選択肢となります。
■ 既接種者・公費対象外の方:キャップバックス®(21価結合型)
すでにPPSV23やPCV13を接種されている方では、血清型の置換(serotype replacement)の問題が重要になります。
小児への結合型ワクチン普及以降、ワクチン非含有血清型によるIPDが増加しており、近年は特定の追加血清型の関与が報告されています。
キャップバックス®(21価結合型ワクチン)は、現在の流行動向を踏まえた血清型を含み、侵襲性感染症の原因として頻度の高い血清型への対応を強化している点が特徴です。
既接種者では、
・前回接種からの間隔
・接種したワクチンの種類
・基礎疾患の有無
を考慮し、追加接種の意義を判断します。
■ 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の重要性
IPDは肺炎に比べて頻度は低いものの、致死率が高く、特に65歳以上では重症化リスクが顕著です。
糖尿病、慢性心疾患、慢性肺疾患、腎疾患、免疫抑制状態の方ではリスクがさらに上昇します。
ワクチンの目的は、「肺炎を完全に防ぐ」ことだけでなく、菌血症や敗血症といった重篤な侵襲性感染症を予防することにあります。
■ 当院での方針
・今年65歳を迎える方には、公費対象のPCV20を推奨
・既接種の方、または公費対象外の方には、接種歴とリスク評価を踏まえキャップバックス®を含めた最適な選択をご提案
いたします。
肺炎球菌ワクチンは、「年齢」で決めるものではなく、「接種歴」と「現在のリスク」で選ぶ時代になっています。
ご自身の接種歴が不明な場合も含め、どうぞお気軽にご相談ください。