- 2026年6月14日
- 2026年6月10日
梅雨を彩るアジサイ ~「死の花」から「癒やしの花」へ~
梅雨の時期になると、色とりどりのアジサイが私たちの目を楽しませてくれます。青、紫、ピンク、白と次々に表情を変えるアジサイは、日本の初夏を代表する花の一つです。
しかし、アジサイには少し意外な歴史があります。
昔の日本では、梅雨は単に雨が多い季節ではありませんでした。気温や湿度の変化が大きく、衛生環境も十分ではなかった時代には、天然痘や麻疹、コレラ、赤痢などの感染症が流行しやすく、多くの人が命を落としました。
ちょうどその頃に見頃を迎えるアジサイは、花びらのように見える「がく」が4枚であることが多く、「4」が「死」を連想させることから、死者に手向ける花と考えられるようになったと言われています。実際に、かつて流行り病によって多くの死者が出た地域の寺院には、現在でも多くのアジサイが植えられていることがあります。
さらに、アジサイは茎や葉に毒を含む有毒植物としても知られています。そのため、墓地の周囲に植えられることの多い彼岸花と同様に、害獣除けとして植えられた可能性も指摘されています。
このような背景から、アジサイには「不吉な花」というイメージが語られることがあります。
しかし、その一方で、アジサイは古くから「厄除けの花」として親しまれてきたという説もあります。
アジサイの魅力は、土壌の性質や成長の過程によって花の色が変化することです。青や紫、赤紫など七色に移ろう姿は、仏教でいう「七難即滅・七福即生(七つの災いが消え、七つの福が生まれる)」を連想させるとして、縁起の良い花と考えられることもありました。
また、常に色を変えながら咲き続ける姿は、仏教の根本思想である「無常」、つまり「すべてのものは移り変わる」という教えを象徴しているとも言われています。実際、「無常」はアジサイの花言葉の一つです。
さて、医療の観点から見ても、アジサイは私たちの心身に良い影響を与えてくれる存在です。
近年、自然や植物に触れることによってストレスが軽減し、自律神経のバランスが整うことが知られています。緑や花を眺めるだけでも心拍数や血圧が安定し、不安や緊張が和らぐ効果が期待できます。
特に梅雨の時期は、気圧の変化によって頭痛やめまい、だるさを感じる方が増える季節です。また、日照時間の減少により気分が落ち込みやすくなることもあります。
そんな時こそ、少し足を止めてアジサイを眺めてみてはいかがでしょうか。
かつては感染症による死を連想させた花が、現代では私たちの心を癒やし、季節の移ろいを感じさせてくれる存在になっています。
医学が進歩した現在でも、ストレスや不安を完全になくすことはできません。しかし、自然の力を上手に取り入れることは、健康維持の大切な一歩です。
梅雨の散歩道で見かけるアジサイの美しい色彩を楽しみながら、心と体を少し休ませてみてはいかがでしょうか。