認知症・もの忘れ受診のメリット

  1. 症状の悪化を緩和できる可能性がある。
  2. 軽度認知機能障害の状態であれば、正常な状態に戻せる可能性がある。
  3. 認知症を引き起す、治療可能な疾患の診断を行うことができる。

もの忘れとは

認知症・もの忘れのイメージ写真

もの忘れとは、年をとるにつれてどなたでもみられる老化現象のことです。人は60歳を過ぎる頃から認知能力が衰え、人の名前が思い出せない、言葉がとっさに出てこないなどの症状が現れることがあります。後で思い出せる場合には自然な老化現象と言えますが、年齢を重ねるごとに発症率が上昇する認知症にも、もの忘れによく似た症状がみられるため、なかなか判別が難しい場合があります。
もの忘れと認知症の違いは、「体験したことの一部」を忘れているか、「体験していたこと自体」を忘れているというのがあります。例えば、朝食を食べていたことは覚えていても「何を食べたかを忘れている」のがもの忘れですが、認知症の場合、「朝食を食べたこと」自体を忘れているということになります。また、もの忘れの方は自分がもの忘れをしていることに自覚があり、日常生活には支障がないことに対し、認知症の場合、たとえ日常生活に支障が出たとしても、いろいろなことを忘れてしまうため、クリニックや病院の受診の必要性を感じなくなってしまいます。
普段の生活の中で、単なる物忘れなのかどうかを本人やご家族の方が判断するというのは困難なことも多いです。なお認知症と診断されたとしても、完治させることは現時点では難しいですが、進行を遅らせることは可能です。また、認知症の一歩手前の「軽度認知機能障害」という状態だと、放置すれば認知症に進行するところ、「軽度認知機能障害」の段階で治療をすることにより以前の状態に戻る場合もあります。最近もの忘れがひどくなったなど、認知症に似た症状がみられるという場合は、お気軽に当院をご受診ください。ご本人だけでなく、ご家族の方からのご相談もお待ちしております。

このような症状があれば一度ご受診ください(例)

  • 少し前(数分~数時間前)に起きたことを忘れている
  • 何度も同じことを言ったり聞いたりする
  • 必要のない同じものを買ってくる(使っていな同じものがいくつもある)
  • 約束していることを忘れる
  • 慣れた道でも迷ってしまう
  • 物事の理解や状況判断ができない
  • リモコンなど今まで使えていたものが使えなくなる
  • 時間や場所がわからない
  • しまい忘れ、置き忘れがよくみられる
  • 料理の味付けが変わってきた
  • 昔からよく知る人の名前が出てこない など

認知症とは

認知症は脳の病気や外傷などによって、記憶障害などをはじめとする脳の機能障害が続くことで日常生活に支障をきたす病気のことです。なお認知症は多数の病気によって引き起こされますが、そのうち4つの認知症(四大認知症)が全認知症患者さまのほとんどを占めると言われています。
なお認知症には中核症状と周辺症状があるとされています。

中核症状 記憶障害、見当識障害(日時や場所などを正しく認識できない)、実行機能障害(計画を立てたり、物事を順序立てて行ったりすることができない)、言語障害(正しい言葉が出てこない)、失行(物事を上手くできない、着替えができないなど)、失認(物事を認識できない、人の顔がわからなくなるなど)
周辺症状 徘徊、妄想、抑うつ、幻覚、暴力・暴言、失禁、睡眠障害

認知症の治療については、一部の病気を除き、現時点で完治させる方法は存在しません。ただ薬物療法や精神療法(心理療法)によって、進行のスピードを遅らすことはできます。そのため、早期発見がとても重要です。

主な認知症の種類

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、全認知症患者さまで一番多い認知症です。これは通常脳内のゴミとして短期間で排出されるはずの「アミロイドβ」というタンパク質が脳内に溜まることで、脳内の神経細胞が脱落し、それにより脳全体が委縮してしまう病気です。認知症特有の症状である中核症状や周辺症状がだんだん強く現れるようになっていきます。男女比では女性の患者数が多く、高齢者になるほど有病率が高くなります。

レビー小体型認知症

脳内に「レビー小体」という異常なタンパク質が発生し、脳内にたまってしまうことで脳内の神経細胞の機能障害が起こります。これによって認知症の症状が現れている状態をレビー小体型認知症と言います。具体的な症状として、認知症でみられる症状(中核症状、周辺症状、)のほか、パーキンソン病の症状(手足のこわばりや震え、動きが鈍くなる、無表情 など)、幻視(ないものが見える)、レム睡眠行動障害(睡眠中に大きな声で叫ぶ、暴れるなどの異常な行動がみられる)なども現れるようになるのが特徴です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは、脳の中の前頭葉と側頭葉が委縮してしまうことにより、認知症の症状がみられる病気です(委縮の原因は脳内に溜まる異常なタンパク質と言われています)。この認知症は40~60歳と比較的若い方に発症しやすいのが特徴で、人の話を聞かない、異常行動(浪費、徘徊、万引きなど)、性格の変化などがみられますが、認知症の病気でよくみられる記憶障害が目立たないので認知症が疑わないこともあります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症とは、脳卒中とよばれる、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といった脳血管障害が引き金となって発症する、アルツハイマー型に次いで多い認知症です。特徴としては、脳卒中になる事で認知機能の低下がみられます。脳卒中は、きちんとした治療を行っていないと繰り返し発症してしまいます。脳卒中を起こした部分の脳機能が障害され、脳卒中を繰り返すことで、障害の症状を増やしていきます。脳卒中を起こす場所により、障害される症状も違ってくるので、症状の出方は様々です。そのため、認知症状がまだらの状態(障害が強い症状と障害のない症状の混在)でみられることもあります。

なおこの脳血管性認知症の場合は、進行を予防することが可能です。それは、脳卒中(脳血管障害)の再発を防ぐことです。例えば、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症 など)による動脈硬化から脳卒中を起こしたのであれば、その治療をしっかり行うことが大切です。